同じ墓地内で縊死したのを見てから、トンとこんな恐ろしいことには出会わなかった農民共は、取りあえず何をどうしたら好いのか、サッパリ様子が分らなかった。
蓑だの笠だので雨支度をした多勢は、黙り返って茫然《ぼんやり》と、どうしても玩具とほか思えないように風に弄ばれなぶられている人間の体を見ていたのである。
赤土が雨に流されて、幾条も縞の出来た所には蹴返されて泥まびれになった木の切株と、ふやけた片方の草履がころがり、地上から三四尺隔っている死人の裾から落ちる雫で、下にはポチポチと丸い小さい穴が沢山出来ている。
「早くおろさにゃあなんねえ」
皆は同じようにそう思いながらまた、同じように誰か云い出す者を待っていた。
大濤のような音を立てて、風が梢から梢へと吹きめぐって来る毎に、激しく動く体の重味で、あの細い繩がプッツリ切れ、ドサッというと一緒に死骸が落ちて来でもしようものならという恐れが、皆をすっかりおびえさせていたのである。
手柄顔をした子供達は、自分をいつも擲ったり叱ったりする「おっかねえ父親《ちゃん》」や「兄《あんに》い」が今日はまたどうしたことか、手も出さないでただ立っているだけ
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