まうかもしれない。
 が、行かずにはいられない。行かずにはすまされない心。
 ほんとうにドシドシと、
 ほんとうにドシドシドシドシと、真の「自分の足」で歩き、真の「自分の体」で倒れ、また自ら起き上られる者の偉さは、限り無く畏《おそ》るべきものではございますまいか。
 まだ心の練れていない、臆病な私は、若しや自分が、万一倒れるかもしれないことを怖がって、一尺の歩幅で行くところを、八寸にも七寸にも縮めて、ウジウジと意気地なく、探り足をしいしい歩きはしまいかということを、どれ位恐れているでございましょう。
 私は、もう二足踏み出しております。その踏み方は、やがて三度目を出そうとしている今の私にとっては、決して心の踊るように嬉しいものではございませず、またもとより満足なものでは勿論ございません。
 けれども、どうでも歩き廻らずにはいられない何かが、自分のうちに生きているのでございます。
 たといよし、いかほど笑われようが、くさされようが、私は私の道を、ただ一生懸命に、命の限り進んで行くほかないのでございます。
 自分の卑小なことと自分の弱いことに、いつもいつも苦しんでばかりいる私は、一体何度倒
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