に傍点]を食べ初めながら柳が、
「ねえ、どう思う? 私、食堂の問題はみんなでもう少し真剣に考えなくちゃならないと思うわ。わたし達家で御馳走をいくらでもたべて補充の出来る身分じゃないもの。謂わばお昼が一等主な食事なんだもの。あんなもの食べさせられて、栄養不良で病気になればすぐクビ[#「クビ」に傍点]じゃ、余り話にならないじゃないの」
「全くだわねえ!」
しづ子が賛成した。ミサ子は柳の言葉やそれに反応するみんなの気分を、我知らずこまかく注意した。はる子の事件は女事務員の大多数に、××○○会社に対する一つの共通な不満感を与えていた。食堂の不平だって、それと心持のどっかでは絡んでいるのだ。
ミサ子は、笑いながら、
「どう? 賄征伐やっちゃ!」
と云って、四五人の顔を見渡した。
「あら、いやだ……」
れい子がそれを、おさえて真面目に云った。
「考えると、でも変だわよ。同じものを給仕さんたちは十銭でたべてるんでしょう? 月給百五六十円の人たちだって二十銭とすれば一番割のわるいのはわれわれ階級じゃないの。われわれ女連が一番しぼられてることになるのよ!」
「だって、まさか私達が食べもののことから
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