のレストラン[#「レストラン」に傍点]にしちゃおうカ」
「ね!」
××○○会社の食堂は一回二十銭ずつの食券だった。ところが賄は請負で、二十銭が勿体ないようなお菜《かず》のときがあった。女事務員たちは、そんなとき食券はとっといて「モーリ」で十銭の昼食をする。
九
ミサ子が帰ろうとしているところへ、柳がれい子とつれ立ってやって来た。
「いっしょに行かない?」
三人は連れだって、中央郵便局の建物の裏を銀座に向って歩いてった。
不図《ふと》思いついたように柳が、
「ねえ、あなたがたどう思う? 私、若しはる子さんがこれっきり退社するようなことになったら、ひとつみんなから慰問金をあつめてはる子さんにあげたらどうかと思うんだけれど……」
「そう出来たら、よろこぶわ、キット」
れい子がすぐ答えた。
「私たち、沖本に腹をたてたりはよくやってるけれど、これぞといってみんなで纏まったことってのは一つもやっていないから、慰問金をあつめるのなんかいいわね」
ミサ子は、黙ってれい子のわきについて歩いていたが内心意外な気がした。れい子は××○○会社の女事務員の中では至って地味で特色の
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