を食べようとも××○○会社へ勤めていると云うと、そのきこえ[#「きこえ」に傍点]で現に間借りをするとき、小母さんの信用ぶりが違った。そういうバカらしい雇われ人の見栄みたいなものにつられて、××○○会社の女事務員たちが、変にツンと自分たちだけでかたまろうとするのだ。そしてまたその方が会社にとっては便利で安全だ。――
 みどりはフト話題をかえ、
「大井田さん、いつも勉強して来るわね」
と云った。そして今はみつ[#「みつ」に傍点]豆のかんてん[#「かんてん」に傍点]をぽちぽちたべながら、
「……私エスペラントなんて柄じゃないんだけれど……でも、講習会へ来てるひと[#「ひと」に傍点]、わりかたみんな気持いい人ばっかりね。それに教科書が痛快だわ。……いっそあのパン菓子屋さんのお神さんにでもして貰っちゃおうかしら」
 みどりは元柳原の裏のアパートをかりて住んでいるのだった。
「気が向いたらよって下さいな。とてもおかしなとこで笑っちゃうワ。どうせ昼間は家にいないから、盲窓みたいな三角の室にいるの……七円よ、悪くないでしょ?」
 ミサ子は、みどりに対するこれまでの自分の心の中にもいつの間にかやっぱり×
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