くり同じという現象を二度くりかえすものではない。この事実は、一九一四―一八年の第一次ヨーロッパ大戦と一九四一―四五年の第二次ヨーロッパ大戦とをくらべてみればよくわかる。第一、二十五年間に武器の発達したことはどうだったろう。武器が発達し、航空能力が発達したことは、戦場を無限に拡大した。戦場が拡大されたということは、現代の戦争が決して軍隊と軍隊との間に行われる武力闘争ではなくなったことを示した。明治以来、満州や中国へいくたびも侵入して、さまざまの残虐行為を行いながら、海をわたって日本へかえってくれば、あの土地で行った悪虐ぶりは知らない顔で一等国になったと威張っていた日本軍閥――資本主義は、太平洋戦争の拡大された戦場の経験で、はじめて日本の人民に、戦争のむごたらしさと戦争の非人道的な性格を実感させた。
権力をもつひと握りの人が、自分たちの階級の利益をむさぼって戦争を挑発したり、戦争を命令したりすることが、どんなに人類の道義にそむく行為であるかということは、近代武器が発達しきっているこんにちでは、戦争が決して軍隊の仕事ではなくなっている現実によって決定されている。女子供、年寄りから病人、赤ん
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