立場にたっているような身ぶりをしながら、実質は保守党とあらそって独占資本の番頭であろうとし、利をうかがってぬけ目ないことも、商売がたきとして見ればうすぎたない態度と見えよう。
 永年の間あらゆる誹謗でおさえて来た共産党の性質が、まだ人民層にすっかり理解されつくさない間に、人民の日常感情がそこまで民主的になってしまわない間に、社会党にも絶望させられた民衆のあきらめた一票を、いそいで保守に集めてしまおうとすることは、果して誰も考えつかない種類のことだろうか。社会党を盗人の巣のように思わせ、そこにスポットを当て、わやわやと目に見える光景にばかり気をとられているうちに、日本の生産はいつの間にかポツダム宣言で武装放棄したにかかわらず何人かのために軍需化され、五年後には主要食糧生産の増加率よりも鉄の生産率の増大が計画されているとしたら、そういうたくらみを推進させつつある権力が、より公明正大であり日本の人民の運命に対して責任をもった権力だという人はないであろう。

 歴史はくりかえすとよくいわれるが、社会の動き、国際関係のいきさつの実際をこまかに注目してみれば、歴史というものは決して端から端までそっ
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