まざまの方法で旧勢力を挽回しようとつとめて、かなりの効果をあげている日本のかくれた軍国主義者の行動に対して、わたしたちは決してお人よしであってはならない。逆の形で東京裁判に便乗して、ひと握りの被告を犠牲にすることによって、現存するファシズムの力を守ろうとしている悪辣な権力にわたしたちは決して二度と自分たちの運命を支配させてはならないのである。

 正義のかかし[#「かかし」に傍点]の役割を負わされている点で、きょう法廷に立つ大臣、社長、官吏が東條たちに似ているというのはこのことである。常識のなかで社会的地位があるように思われている人物が、次から次へ不正事件であげられると、さも何処にか厳しい正義が存在しているように思われがちである。
 国会解散がいい出されているきょう、社会党につないでいた一般の期待が一つ一つと失われてゆくような事件があばかれることは、結局誰にとって有利なことであろうか。社会党はきわめて少数の人をのぞいて、政権をとるためには特権階級の利益をまもることで全く保守党と同一の立場をとった。それでも、純粋の保守的な政党からみれば、歓迎したい勢力ではないであろう。社会党が勤労階級の
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