平和をわれらに
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九四九年四月〕
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ここに一個の人物がある。自分のしたい存分をやって、しかもその行為の責任を問い批判する権利をもっている人々の眼、口、耳をおおうために、そこにある報道能力を奪うとしたら、社会の常識は、そういうやりかたを何という名でよぶだろう。ひとのうちへ押し入って勝手な暴力をふるおうとするものが、よく電話線をきったりする。さるぐつわをかませる。手足をしばる。そして目的を達する。こういう行為は反社会的な犯罪とされている。権力をにぎっており、議会において多数であるという力を横車に、自分のところでこれまで一枚も出していなかった政党新聞の用紙を日刊十万部分もわり取って、野党の機関紙をひどいのは十分の一ばかりに切り下げようとするやりかたは正当でない。検事総長が「友人づきあい」で疑獄事件に顔を出す「法の権威」は、こういう言論の自由抑圧の事実をどういう罪名でよぶか知らないが、日本の民衆としては、自分の投じた一票で猿ぐつわをかませられるとは心外だろ
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