う。
現内閣は、政権をとったら、何より先に公約は果せないことを確認して、いい度胸を見せた。「売られる子供」が問題となり「まだ少年奴隷をもっている国日本」と国際的な注視をあびているとき、現内閣はまっさきに婦人少年局を廃止しようとした。これはさわがれて、目的を果さなかった。大学法案というものを出して、これもごうごうの非難をあびている。大学法案は日本の学問が自主的に発展してゆく道を失わせるために最も効果がある。たださえ日本人は猿まねと軽蔑をまねいて、心ある日本人に苦しい思いを抱かせているその日本の学術精神から、この上基礎的勉学を奪い、応用、模倣の末端ばかりを仕込んだら、次の世代の日本人は、世界の学問水準からみたら、命令を理解するに足りるだけの程度をもった知的土民(インテレクチュアル・ネティヴス)となりさがってしまうだろう。
六・三制のためには、子をもつ親のすべてがひどい思いをして、町にも村にもボスがはびこる有様だが、こんどは六・三制のための予算は丸けずりとなった。その上学童の知能は低下したからと、文部省はこの新学期に、四学年用のものをのぞいて数学の教科書『さんすう』の内容を一学年ずつくり
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