である。
 第三回の文化擁護の国際作家会議はアメリカで開かれるそうである。太平洋をかこむ諸国の文化の正当な開花のために来るべき会議が冷淡であり得るとは考えられないのである。
『文芸』や『星座』が試みはじめたつつましやかな民衆の文化|交驩《こうかん》の機会が、どうかまたすみやかに恢復されることを願っている。

        女の作品
          三篇に現われた異なる思想性

 中本たか子氏は数年来、非常な困難を経て、肉体にも精神にも深い損傷を蒙った。それにもかかわらず、まだ健康も十分恢復していないのに、出獄してからもういくつかの執筆をしている。中本さんらしい骨身を惜しまなさが感じられるのである。「白衣作業」(文芸)もその一つの作品である。これまで、こういう題材が婦人作家にとりあげられたことはなかった。そしてこの作者らしい力をこめた感情の緊張で全篇が貫かれている。
 菊池寛氏が東日の「廻旋扉」でこの作者が昔の浮上ったところをふるい落したことを買っていたが、しかし、あの批評を、作者自身は何とよまれたであろうか。
 元よりも落付いたというような局部的なことは当っているかもしれないが、
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