文芸時評
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)羈絆《きはん》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)文化|交驩《こうかん》の機会が、

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)そういう面白さ[#「面白さ」に傍点]も加味しようと
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        時局と作家
          浪漫主義者の自己暴露

 九月の諸雑誌は、ほとんど満目これ北支問題である。そして、時節柄いろいろの形で特種の工夫がされているのであるが、いわゆる現地報告として、相当の蘊蓄をもってその人なりの視点から書かれているのは『改造』山本実彦氏の「戦乱北支を行く」である。同じ『改造』に吉川英治氏の「戦禍の北支雑感」がある。これを読むと吉川氏のようにある意味ではロマンティックな高揚で軍事的行動を想像の上で描き出していた人でも、悲惨の現実、複雑な国際関係の実際を目撃すると、締って来るところもあることがうかがえるのである。

 今度の事変がはじまってまだ間もなかった時、尾崎士郎氏が時局と作家の関係について感想を新聞に発表されていたことがあった。尾崎氏ら
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