うものは実に異常なたかまりを見せている。八月号の諸雑誌を一とおり見渡しただけでもそこには幾つかのソ同盟探求の座談会記事があり、出席者の顔ぶれは軍事関係者が多い。秦新聞班長などの活動はなかなか旺《さかん》なのである。
 この間ソ同盟の飛行機が北極を通過して一気に一万六百キロ翔《と》んでカリフォルニアのサンジャシント飛行場へ着陸し、六十二時間九分で、北極経由モスクワ・北米間の「スターリン空路」を確立したことがあった。報道映画の世界的傑作の一つとして、シュミット博士一行の「チェレシュキン号の最後」の新鮮な感動や人間的活動の美しさを記憶している夥しい人々は、ここにも自然に対して知慧ふかく順応しつつその条件を人間生活の豊富化のために積極的にとらえて行く活力の詩を感じたことであったろうと思う。
 ところがあの新聞記事を読んで、こんな成功は嘘だ、と云った人の話をきいた。そう云った人はロシア語で飯をくっている男である。所謂《いわゆる》ロシア通の一人なのであろうが、こんなのは又例の宣伝だ、と云うので、傍のものがびっくりして、しかしこれはアメリカ側の公式発表ですよと注意したら、いや、それだってとにかく嘘だ
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