想と思索方法とが全く動脈硬化的な抽象論を一歩も出ていない」という翻訳者として意見を表明しておられる。
『改造』では、更に猪俣津南雄氏の「トロツキーの『裏切られた革命』」という一文をのせている。猪俣氏の平明な健康な常識は、ソ連における政治経済事情の歴史的推移の過程の要所にふれつつ、トロツキィーが「もしその間の事情を『科学的に評論』することが出来たならば、恐らく彼はこの『裏切られた革命』を書きはしなかったであろう。『革命』は彼自身によって『裏切られた』ことを認めねばならないからである」云々と、この一本が、今日の如何なる国際事情のもとにいかなる役割を負うて登場して来ているかという客観的意義を解剖していられるのである。トロツキーのこの著作の翻訳がいかなる傾向の日本の現状によってかく大々的に扱われるのであるかということを、歴史的展望に立って鋭く洞察しなければ、新聞代まで高くなったほど紙の騰貴した折柄、悪意を満載した紙屑がしかく普及されることの矛盾が私たちには諒解され得ないだろうと思う。
春夫の狗肉
昨今、ジャーナリズムに反映している面だけを見てもソヴェト同盟に関する興味とい
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