いたって、墨汁をぬたくられた作家同盟の活動を決定する根本的な条件なるものは、見ることができない。墨汁の下に何が抹殺されたのか? 「ナップ」の国際組織加入その他ハリコフ会議の決議である。
 官憲は大会のはじめっから終りまで「ハリコフ」という四字を、そのほかのいろんなプロレタリア芸術運動の階級性を示す言葉と一緒にタブーにした。断然いわせなかった。
 だが、大会へのメッセージは、トヨタマ刑務所の内から、朝鮮プロレタリア作家同盟(カップ)から送られたばかりではない。ドイツ・ナップ支局からメッセージが来た。アメリカの革命的芸術家団ジョン・リード・クラブは、日本プロレタリア作家同盟に同志の挨拶を送ってよこした。
 ロンドンだって、黙ってはいない。世界の革命的プロレタリア芸術運動への激励と、ソヴェトの守りを主張している。
 大会の議題と議事録から、官憲は日本プロレタリア作家同盟の国際的同盟加入の問題を墨汁の雲で塗りかくした。
 でも、この事実はわれわれに何を告げるだろうか? 全プロレタリア解放運動の戦線強化につれて、その文化的一翼であるプロレタリア芸術運動は、今日もう実質的に国際化しているということ
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