文学の流れ
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)旺《さかん》なものを

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)猶当と[#「当と」に「ママ」の注記]は
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 いつの時代でも、技師や官吏になろうとする人の数より、作家になろうとする青年の数はすくなかった。今の時代は、猶そうであろう。文学を愛しつつも、作家としての生活に様々の意味で危惧を感じさせるような事情がこの二三年間にたかまって来ている。経済的な点で、作家として食えるか食えないかということであれば、明治大正から現代にかけて活動している作家の殆ど皆が、あやうい綱をわたって来ているのである。この二三年の間にたかまって来ている問題には、文学そのものの社会的な意味についての疑問というべきものが加っているのが著しい一つの特徴であると思う。日本の文学が現代の段階までに内包して来ている諸条件と、急速に変化しつつある世態とが、交互に鋭い角度で作用しあって、例えば、行動の価値と文学の本質及びその仕事に従うこととの間に、何か文学が社会的行動でないかのような、文学への献身に確信を失わせるような一
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