ある。
林房雄は、プロレタリア作家として持つ自身の影響力によって、作品はその成功失敗にかかわらず、プロレタリア文学運動全線の問題として批判されるのであることを、まともに認めなければならぬ。ブルジョア・ジャーナリズムがわが陣営の作家を恐怖し、有能な作家が投獄されている時、われらは全力をつくし、どの一部を切ってもピチピチとそこだけで叫ぶべきことを叫び得るようなボルシェビキ的作品を創作してゆかなければならぬ。対立する階級の独占的文化機関の一部をわれらが占めたなら、それはプロレタリア世界観によって確保し、勝利の足場とすべきである。
林房雄は二年の獄中生活の間、決してあんけらかんとしていたのではなく、大いに読んだ。朝五時に起きて午前中創作に没頭するという学ぶべき習慣も奪取してきたという話である。「青年」「乃木大将」その他は二年間の読書の成果なのであるが、林の作品を批判するにつれて、一つの強い憤怒が湧いてきた。それは専制国日本の刑務所で実行している読書制限の問題である。
現在豊多摩にいる同志たちはトルストイやドストイェフスキイなどさえ禁止されているという有様だ。率直にいえば、そのような不便な
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