ゆく過程を描いているものです。日本でまたいわゆる「赤」を恐怖させるために努力がされている今日、この仕事は無意味でしょうか。単に女主人公の経験だけを描いているのではなく、ソヴェト社会の建設、日本の帝国主義者のファシストとしての活動、日本の小市民家庭、インテリゲンチャの一部の混乱と崩壊、ポーランド、ドイツの労働者へのテロル、帝国主義日本の在外官僚の反ソ的言動、全体として若く建設されつつある新しいソヴェト社会と、老朽しすくいがたい矛盾を偽瞞によってのみおおおうとしている古いヨーロッパとの対比も描かれています。これらには労働者の階級的勝利への確信とソヴェト同盟への深い信頼が貫れています。こういう階級性は決して作品の具体的な世界から遊離した観念としてのべられているのではなく、作品の血肉として消化され、芸術として形づくられています。主人公は、まだ階級的に目ざめつつある過程が描かれているのですから、まだ共産主義者として行動していないのは小説として当然のなりゆきで、その点をもって小説全体に階級性がないということは当っていません。
長篇の今後の展開の中で主人公は共産主義者として行動し、そこには過去十
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