「女の一生」のジャンヌと「凱旋門」のジョアン・マズーとの間にどれだけ大きなヨーロッパの資本主義社会全体の変化が語られているかということを理解し、スカーレット・オハラの強い性格が南北戦争の波瀾を通じて精力的に日々の生活ととっくみながら、いわゆる逞しく生きとおされながら、その窮極では一つも社会的な人間としての性格発展なしに、もとの自分の農園にかえってゆく、そのように通過された生活があるだけの人生の生き方について疑問をもっている。「にごりえ」の世界を、現代の売笑の女の気風とくらべたり、「妻の座」を「あぶら照り」や「伸子」とともに「女の一生」と連関させて考えることもできる。
 そういう人は世間でいう文学の話せる人[#「文学の話せる人」に傍点]の、タイプである。今日の世界民主婦人連盟について知っており、ソヴェト同盟や中国の新しい社会で婦人がどう生活しはじめているかということについても、相当に知っているだろう。日本をこめる世界の帝国主義が、世界の全人民の幸福と平和にとって、どんな役割をもっているかということも、分っているだろう。そして日本の文化や社会の習慣から封建と軍国主義的な影がとり去られなけれ
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