ばれていることを語っているともいえる。女の悲惨な運命に対してそれをいやがり拒絶したい気持はもとよりあるけれども、それならばといって積極的にこの社会での、婦人の立場をより希望のある楽しい人間らしいものにしてゆくために、自分としてはどの点をどうしてみようという主動的な決断と行為がなくて、結婚についても、不幸になりたくないという漠然とした最低線を感じているような人である場合が多い。組合の中でいえば、それは資本家はひどいけれど、わたしたちの技術だってまだ男なみでないんですもの、というように、現象だけをとらえて、社会関係の本質まではっきりとつかまない人々であるかも知れない。
第二にはこういうタイプが考えられる。その人は文学作品もいろいろよんでいて「女の一生」のほかに「復活」もよみ、スタンダールの「赤と黒」もよみ、レマルクの「凱旋門」もよみ、「風とともに去りぬ」もよんでいるとする。同時に「たけくらべ」「にごりえ」をよんだことがあるし、「あぶら照り」「妻の座」も読んでいるとする。「伸子」を読んでいるかもしれない。そしてこれらのすべての作品をそれの書かれた時代の順にくらべて考えてみる力ももっている。
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