れよりも、むしろ書いてゆけばゆくほどかくれていたいろいろの複雑な関係がわかって来て、その関係を自分で満足するまで描き出そうとする、とまた新しくそこにわからないところも、つかめていないところも出て来る。思いがけないところで先がつまって、そとでのひと勉強――場合によっては全く文学の枠のそとで研究、経済だの組合問題だのの勉強が必要になってくるかもしれない。しかしそれは、新しい小説を創造してゆこうとするこんにちの人々にとっては、むしろ当然ではあるまいか。生活と文学の明日そのものが、その人の歴史に新しい明日であり、日本の歴史そのもののうちに新しい人民の明日としてまだ誰にも経験され、書かれていないのだから。そこにこそ、創造のよろこびとコツコツ労作をいとわないはげましとがある。文学が伝統的な枠の中だけでは決して新しくなってゆけない理由がここにある、流派や手法だけでの新しさで、文学の本質が新しくされるものではない理由がある。
 その意味で「文学のことば」もかわって来ないわけにゆかない。簡明で云おうとすること、内容がくっきりとうちだされていて、あいてによく通じるわかりやすさ。それが必要なばかりでなく、こ
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