復活
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)所謂《いわゆる》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)内容をもったしぐさ[#「しぐさ」に傍点]であった。
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 帝劇で復活を観た。一九三〇年にモスクワ芸術座で上演された方法で演出された。
 つよく印象にのこったこと。
 カチューシャに扮した山口淑子は熱演している。各場面ごとに、その場面の範囲内で。このことは、女優としての山口淑子に、カチューシャの人間的成長の全体が、自分によくのみこめた一貫性をもってうちこまれていないということを語っている。
 ネフリュードフに悪態をつくところ、牢獄でウォツカをあおって売笑婦の自棄の姿を示すとき、山口淑子は、体の線も大きくなげ出して、所謂《いわゆる》ヴァンパイアの型を演じる。けれども、最後の場面で、政治犯でシベリアに流刑される人々にまじったカチューシャが、その人々の感化から自分の過去の不幸の意味を理解し、人間としてそこからぬけ出してゆく途がわかってみれば、ネフリュードフの自己満足のための犠牲はいらないこととわかって、ネフリュードフと訣別する。そ
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