。
重吉は、いくらか促すように、
「――今、みんなの経歴をあつめているんだ」
と云った。
「――仕事、どういう風になるのかしら。それが分らなくて」
ひろ子が短い啓蒙的なものをかくたびに、重吉は、仕事を整理しろ、と云っていた。そんなことで、いつ小説が書けるか、と云っていた。文化の各方面で、それぞれ本当の専門家が生れなければならないことは痛感されていた。昔のプロレタリア文化運動とそれにしたがった人々の仕事ぶりの推移をみれば、それはすべての人に肯《うなず》ける必要なのであった。小説はいつ書くのか、と、とがめるように云う時さえある重吉の考えは、経歴書とどういう角度で結び合わされているのだろう。拒絶する理由はどこにもなかった。それはひろ子にとって、ひろ子が石田の妻であることに等しく自然な本質に立っている。が……
「今すぐ書けなければ、あとでもいいんだ」
そこへ、又見知らない黒外套の人が戻って来た。ひろ子は、十分話し合えず、すまない、いやな心持でその話はうち切った。
八時すぎて夕飯が終ったとき、ひろ子から再びその話をとりあげた。
「きょう、もしかしたら、あれを書くようにと思っておよびにな
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