俳優生活について
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)あとからつけたした思想[#「思想」に傍点]みたいに
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芝居について大変よく知っている作家があり、そういう人々は舞台をよくみているし、俳優の一人一人についてもゆきとどいて理解している。わたしは、それとは反対の作家の一人であると云えよう。芝居のことについて知っていない。余り舞台もみていないから、したがって一人一人の俳優について、こまかくその芸術の変遷を辿るということも出来ない。
しかし、この間、何年ぶりかで「プラーグの栗並木の下で」を観て、俳優生活というものについて、これまでになく心を動かされるものがあった。
名優が、老年になってから自分の思い出を本にかくことがよくある。スタニスラフスキーの思い出は厚い本になって日本でも出版されていた。チェホフの手紙をよむと、妻君であるオリガ・クニッペルに向って、実に親切に、おだやかに、俳優の芸術家としての見識について、芸術境地の高めかたについて忠告を与えている。どれをよんでも、名優というものが、すべての芸術を
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