の風
あか/\と日は難面《つれなく》もあきの風
旅にやんで夢は枯野をかけ廻る
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連句のなかにもまた独特な感覚がある。例えば、
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このごろの上下の衆のもどらるゝ 去来《きよらい》
腰に杖さす宿の気ちがひ 芭蕉《はせを》
二の尼に近衛の花のさかりきく 野水《やすゐ》
蝶はむぐらにとばかり鼻かむ 芭蕉《はせを》
芥子あまの小坊交りに打《うち》むれて 荷兮《かけい》
おるゝはすのみたてる蓮の実 芭蕉《はせを》
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このような様々の情緒とつよい現実感の峯をなして、
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閑《しづか》さや岩にしみ入蝉の声
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の句が、芭蕉の芸術として今日まで消えぬ精神の響をうちいだしていると思う。この雑誌には吉田絃二郎氏の氏らしい「奥の細道」註解が連載されていた。ここにあげた中の幾つかの句は「奥の細道」におさめられているものだが、芭蕉という芸術家が、日本の美感の一人の選手だから、教養の問題として、それがわからないというのはみっともない、そうい
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