だ丈の口紅や、紙袋入りの白粉が並べられたりしている。一方の隅に、アメリカのどんな避暑地にある日本土産品店よりも貧弱な日本品陳列場が出来ていた。白樺のへぎ[#「へぎ」に傍点]に、粗悪な絵具で京舞妓や富士山を描いた壁飾。けばけばしい色どりで胡魔化した大扇。ショウ・ケースに納められているのは、焼けのこったどこからか集めて来た観光客向の縮緬《ちりめん》紙に印刷された広重の画や三つ目小僧がつづらから首を出している舌切雀のお伽草子類である。こんなものが商品と云えるのだろうかと怪しまれるような妙な金属の加工品、紐、網、安全カミソリが並べられている。光線の不充分な薄暗いベニヤ板の匂いのする売場の中に、どれ一つとしてまともでない物品のゴタゴタある店内の光景は、大都会の河岸に漂いよった生活のごみという感じを与えた。
 東京に進駐してまだ三四日しかたっていなかったアメリカ兵が、あとからあとからと、その暗い洞のような、何を売っているのか分らない店の一方の入口から、入って来ては、もう一つの口から出て行った。
 ひろ子が、一つのショウ・ケースのわきに立って眺めていると、二人づれの若いアメリカの将校が入って来た。み
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