くりかえし直次がよく才覚し、よく稼ぎ、よく人に振舞い、よく儲けた手柄を話した。
「ほんに、あの位やわう(柔い)に出来た人間は、たんとないと思いませ」
 そして、登代は、
「直次がよう稼いでくれよったから、こういうことになっても、つましゅうすれば何とか子供らを大きくするだけは心配のうやれます」
と云った。しばらくして、登代はいかにも、遠く手たらん[#「手たらん」に傍点]ものを思い出している風で、
「もうそろそろ重吉はんも、手紙みてじゃありましょう、のう」
と云った。
「そりゃ見てでしょう。どんなにびっくりしていなさるか。早く手紙でもよこせるといいけれど。困るわねえ、ああいうところは。――意地わるい規則があったりして――」
 重吉は、治安維持法によって無期を云いわたされた。網走に移されたのはその年の六月であった。母には、巣鴨の拘置所もぐるりがすっかり焼けたので、漠然疎開のように説明してあるのであった。石田の長男である重吉のこころもちとして、父親が中風で床についたきりであった七年の間、それから直次や進三の入営、除隊、父の葬式、応召、婚礼、又出征、初孫の誕生という時々、ひろ子は出来るだけのこと
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