ラス戸が鳴った。部屋の中に雨洩りがはじまった。畳におちる滴の重い柔かい音がする。ややしばらくして、階段をのぼって来る影法師を大きくうしろの壁に写しながら、かみさんが燈明皿をもって来た。そして、どの部屋へもいくらか間接の明りが行くように、廊下の本箱の上にそれをおいた。ひろ子の部屋の雨もりに、大盥がもちこまれた。
 ひろ子は、また昨夜の女客の室へ入れてもらった。同じ布団の中で自分の鼻に馴れない化粧料の匂いを感じながらうとうとしかけると、この天井からも雨がもりはじめた。
「まあ、どないしましょう! 眠られしやへんわ」
「大丈夫よ。この雨では、伴れの方、帰らないでしょうから自分のところへ行きますから。そっち側へずっとよって、布団の端を折ればおねられになりますよ」
「そうどっしゃろか」
「すこしなんですもの、まだ……」
 横なぐりの豪雨はいくらかしずまった。が、大盥にしたたる雨洩りは、暗い室の中で繁くきこえている。ひろ子は、足さぐりで畳のしめっていない床の間よりの一隅を見つけた。廊下に出してあった布団をもって来て、そこにのべた。
 ほかの部屋では、早い宵の口から眠れもせず、廊下に向った唐紙をあけ
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