ら、ひろ子は、熱心に思いつづけた。ひろ子が、きょうこんなよろこびで二人の暮しを想うことが出来る、その可能を、あのとき、この折と、根気づよく導き出しながら困難な永い歳月を通って来たのは、何のおかげによるのだろう。それほどひろ子の愛は常に深いおもんぱかりに充ち、一本だちで、歴史の発展を見ぬいたものであったろうか。知らないうちに重吉が手をとって、いくつかの暗礁をこさせて来てくれていた。
ひろ子は、東京ではじめて重吉にあうとき、自分として第一に云うべき言葉は、彼の永年の辛苦に対する心からのねぎらいと、同じ心からの感謝であると思った。二人でここまで生きて来られたことに対して。
いきなり隣の部屋で、バタンと畳にぶっ倒れる音がした。
「大阪じゃ、家族の居どころさえわかっちゃいねえ。――俺あ、戦争には愛想もくそもつきはてたぞ」
「…………」
「どうだ無理かよ。――無理じゃあるめえ」
「うん」
「貴様らあ、まだ若いからいいさ。俺あじき五十だぜ、考えてみろ。ぶっ殺されたってもう二度と戦争なんぞへ出てやるもんか」
「もう戦争は、しねえことになったんだとよ」
「ふん」
そうなったのが、おそすぎるのをさも
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