と待っとって下さい。事務所さえあったら、きっと宿ぐらいなんとかさせますから……ここ動かんと待っとって下さい」
 案内係は、没義道《もぎどう》につっぱねないが、積極的な助力は出来かねた。
 じき、支店長が戻って来た。
「お待たせしました。さあ、事務所へ行きましょう。大丈夫です、宿は何とかなります」
 警察から七八間先の並びに、第一建物会社と大きい看板をかかげたバラックがあった。
 奇妙な組み合わせの三人の道づれが、一列になって入ってゆき、狭い机と床几の間で、姫路支店長というのに挨拶した。
「石田と申します、思いがけず大変御厄介になりまして……」
「いやいや、わたしの方が、どんだけお世話になったかしれません」
 眼の不自由なその人は、広島辺の、同じ会社の支店長をしているのであった。
 案内の若い者につれられて、三人は白鷺城の濠《ほり》について、人通りのない雨の道を、旧城下町へ入って行った。白鷺城は、遠目に見る天守閣の姿が空に浮きたって美しく、往復の汽車から眺めて通るひろ子の目にのこった。古い濠の水は青みどろに覆われていた。濠端の古い柳が、しずかに雨にもまれている。一つの橋をわたった。河に添
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