体が酒場の脚高椅子のわきに立っている身ごなしである。ひろ子は、すこしはなれた床の上にリュックをおろしてそれを眺め、好奇心を動かされた。几帳面で、渋ごのみの服装と、その男のどこやら伝法な裏の裏まで知っているとりなしとは不調和なようで、調和している。何を商売とする男なのだろう。
案内係との交渉が、望みうすなのを見ると、赧ら顔の支店長は、小柄な体を心配そうに動かしながら、誰にともなく、
「この辺に、第一建物会社の事務所ありませんやろか」
と云った。
「もとは、ここのついねき[#「ねき」に傍点]にあったんですが……」
「第一建物会社?」
「その会社やったら、元のところに仮事務所建てています」
若い女の事務員が、人だすけの出来ることを自分も愉快に思う明るい善良な声で口を挾んだ。
「元のところにありますか!」
いかにも助かった、という風にききかえした。
「第一建物ですやろ?」
「そうです」
「そやったら、ほんと。元のところです」
「開けてまっしゃろか」
「ええ、事務はとっておられますわ」
支店長は、あわてて、
「ありがたい、ありがたい」
リュックを背負いあげた。
「あなたがた、ここ動かん
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