った横通りの方に水が出ていて、女が番傘をさし、高く裾をかかげて、ザブ、ザブあちら向きに通ってゆく。一行は、水の出ていない方の通りを真直にゆき、二つばかり角を折れて、狭い通りにある一軒のしもたや[#「しもたや」に傍点]の土間に入った。
 土間まで入ってみれば、上り端の畳に衝立があったりして、人を泊める家らしい。通りすがりの外見では、それらしい様子がうかがわれず荒廃のあらわれたなみの家なのであった。先着した三人の若い復員兵が、濡れた皮革の匂いをさせながら、上り口いっぱいになって靴をぬぎかけている。
 ひろ子らのとおされたのは裏二階の六畳であった。日頃は家族の誰か若い女の室となっているらしかった。友禅メリンスの覆いのかかった鏡台があった。その上に白粉の箱が出したままである。古びた三尺の縁側の外は手摺で、そこに迫って裏の篠笹山が見上げられた。番小屋のようなものが、輪郭の柔かなその頂に建てられている。
 狭い裏梯子から、風呂場や厠《かわや》に行くようになっていた。その裏梯子に雨洩りがしていたし厠への廊下は、しぶきをとばして雨が落ちかかっている。階下には、様々の年齢の多勢の家族が格別客に気がねする
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