に合うように三原の駅へ来て、ひろ子は、ともかく昨夜女集金人の家に泊れたことをよろこんだ。小さい田舎の駅でしかない三原は、構内の広場から往来まで旅客で溢れ、まだ降りつづいている早朝の雨の中に、泥濘をこねかえしている。ひろ子が、そこで夜明しが出来るだろうと思っていた駅の待合室の中は、ぎっしり詰った人々が立っているさえようようの有様であった。ベンチなどは、群集と荷物の下に埋められて、ひとわたり見まわすひろ子の目にさえ入らなかった。乗りこんだ列車は構内の群集のすさまじさの割に案外すいていた。昨夜十一時すぎに三原を発車する予定だった列車が、とうとう動かず今朝までそこにいたのであった。四人一組の復員兵たちが、飯盒《はんごう》で炊いた飯を、はしゃぎながら食べていた。
 ひろ子は、まだ濡れて重いもんぺをぬいで窓のわきの物かけ金具にかけ、ズクズクの女学生靴もぬいで、座席の上に坐った。
「大分ぬれましたね、どこまでです?」
 兵士のひとりがたずねた。
「東京までかえるんですが――この汽車、動くのかしら」
「さあ、そいつあ、神様ばかりが御存じだ」
 洋酒の名も知っていてダンスもするという顔立ちに無精髭の生え
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