云うべきことを云った。
それは二間だけの家であった。永年のつましさと世間ていに対する神経とが入るなり感じられる様子であった。話のはこび工合から、ひろ子はつれの男を、月掛無尽会社か何かそういう種類の会社の支店長であり、女はその部下の女集金人と判断した。工場へ出ているという二十四五の息子も帰って来た。女手一本でどうやら嫁入りさせたばかりという娘の噂が出た。
ひろ子は、急用で東京へ是非ともかえらなければならない者として自分を紹介した。質素ななりをして、札びらを切るような風もないひろ子に対して、浮世しのぎに肉のつく暇もなかったらしい細君が冷淡なのを、ひろ子は、当然なことと思った。須波、三原間の徒歩連絡がはじまってから三原の町には毎日一万から二万の旅客が停滞した。空襲をうけなかった三原の町は、呉やそのほか大きい町々の買出し場所であった。その上、水が出てからは毎晩、一人二人ひとを泊めていない家はないとのことだった。そうきけば、須波の駅から崖をよじのぼって人家の裏道へ出たとき、いち早くくりのこされた雨戸から洩れる燈火に黒く群れ、頻りに家内の女と交渉している復員兵たちがあった。
一番の汽車に間
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