ないプラタナス並木の青葉。やたらに建物ばかり大きく建ててみたが、全部つかい切れないでその一階で不活溌に執務している郵便局。
 ここにおびただしい人間が集められ、生きていた。しかし、生活らしい生活は無かった。五月頃から
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ニッポンよい国 花の国
七月八月 灰の国
九月十月 よその国
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 そういううたが、街上でうたわれた。一台のバスにきっと憲兵が一人はのってはしりまわっている。その街路で、このうたが流行し、うたわれた。生活にかぶせられている愚弄と穢辱《わいじょく》に腹立つ感じが、人々の間に、そのうたの辛辣さが共感されたのであった。

        十三

 いかにも、熱心で向上心にみちた若い女教師がつかうらしく、その机の上は整理されていた。きちんとおかれた赤とブルーブラックのインク。硯箱、和英、英和と漢和の字書。まとめて綴られている書類。教育、心理、物象などの参考書。そのわきに少女っぽい花瓶がおかれ、白いえぞ菊の花が飾ってある。
 反対側の縁側に、脚のこわれかけた食卓があり、そこを見ると、つつましくパフや紅刷毛があって、さわ子の化粧台となって
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