いる。ととのったなかに、若々しいととのわなさがこぼれて、愛嬌となっている部屋の空気は、ひろ子のこころをやわらげ、おちつかせた。
毎日仕事のためにつかわれ、そのために手入れされている机の居心地よさ。東京で、ひろ子が一人留守居していた弟の家のある地域は、一月下旬から空襲をうけはじめた。壕の中で食事をする生活では、机はそこにただ置かれているというばかりであった。食事をしたちゃぶ台で、茶碗を片よせて、重吉への手紙は書かれた。
福島の田舎の家では、机はあってなかった。ひろ子は、そこにいて、毎日、北のことばかり考え、青函連絡船の恢復を待ち、網走へ、網走へ、とばかり思いつめていたから。その思いは、云わば膝の上に板一枚のせただけでも、あらわせるものだったし、更にその板を奪われても、なお書きつづけられるようなものなのであったから。
古びてラックもはげたさわ子の机のまわりにある雰囲気は、きょうはきのうから生れ、明日はきょうの中からぬけ出てそうして続いてゆくものであるという生活の真実をそのままうけとって生きている者の単純な落付きであった。
半歳の間、東京での生活はサイレンの音ごとに苦しく遑しく寸断さ
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