ひろ子はユーモラスに、
「ああ、おどろいた」
と云った。
「二個の南瓜、裏道へ蹴出さる、と云う工合ね」
ひきしめられていた神経の反動という笑いかたで、縫子も歩きながらときどき立ちどまって笑った。
「駄目よ、縫子、やめなさい。そんな笑いかたすると、体がぐにゃぐにゃして、頭痛がすることよ」
二人は、部落にとってすべての悲しみと災害との象徴である軍用新道を歩いて行った。
石田の家の裏あたりでは一応完成しているように見える新道は、しばらく行って部落を出はずれ、製材所の在る辺から、次第に、粗雑な工事の弱点をあらわしはじめた。バラスが十分入れられていない赭土《あかつち》道が、乱暴なトラックの往来で幾条も車軸がめりこむほどの深さにほじくりかえされている。新らしい切通しの左側が崩壊して、大きい立木が根こそぎ道端まですべり落ちていた。左右に切通しの石だたみを見上げてその下を通りぬけるとき、ひろ子は恐怖を感じた。地盤のゆるんだ崖にはられている高い石畳みが信用出来ないばかりでなかった。人目の届かないその山の上で、どんな工事をしかけていたのか、巨大な石柱が横に赭土の中から、宙に突出たままにされていた。
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