うあります」
 全く念頭になかった家のことだの食物のことだのにふれられて、ひろ子は閉口した。ひろ子がおばたちの家で欲したのは、罪のない一つ二つの笑いだけだったのに。――
 三時頃、まだ決心しずにいるひろ子のところへ、つや子がわざわざあがって来た。そして、
「縫子はん、何時頃、おかえりますの」
 待ちかねる表情をむき出しに尋ねた。
「――田原へはおいきませんの?」
「どうしたのさ、つやちゃん。そんなにせっつかなくたっていいのに――。お母さんに伺わなくちゃきめられないわ、そうでしょう?」
 ひろ子は、まだところどころしか床板のはられていない階下へ下りて行った。戸棚の前で母に相談した。
「おいきませ、おいきませ。却ってそれがよろしうあります。ああいう気分の者じゃけ、ほん、いけんのう」
 縫子とつれ立って出がけに、つや子は台所の土間にいた。
「じゃ、行って参ります」
 こちらの廊下からひろ子が大きく声をかけたが、つや子は横顔を見せたまま返事をしなかった。

        十二

 何となし足早に小一丁ほど歩いて、段々ひろ子の気分は諧謔的になって来た。しまいに笑い出し、足どりも緩やかになって、
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