りますよ」
と云った。
「どうして? お母さん。わたしは一番役に立たないから、却ってすまないと思っているのに」
「あんたがいるけに、どんだけ心づよいかしれん」
 登代は、心に何か切ないものがあって、皆の働いている午後、こうしてひろ子一人の二階へ上って来た。二三日の間に憔悴《しょうすい》のあらわれた顔を新道へ向け、その長い道の上にちょこんと滑稽に干されている仏壇を眺めていたが、
「ほん、ふ[#「ふ」に傍点]のわるいことばかりつづくのう」
 しんから気落ちした調子で、涙を浮べた。
「直次は、ああいうことになる。水はつきよる――ほん。このうちは、ふ[#「ふ」に傍点]のええことはないようなうちになった」
 水の出た夜からきょうまで、登代もつや子も、直次がいたらば、ということはついぞ口に出さなかった。そういう歎きの間もないほど、臭い家、濡れた家財が女たちを追い立てた。疲れ切って今、西日の座敷で悲しくなっている母を、ひろ子は心から痛わしく思った。
「ほん、どうしていいやら、わたしには分らんようになった……」
「どうして? おかあさん」
 ひろ子は、おどろいて母の顔をのぞいた。
「これまでお母さんに
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