つけた。大きい影が、人々の横になっている枕もとの壁に映ってゆれた。帰れなくなって気の毒だけれども、縫子がいてよかった。ただ、一人の手がふえているというばかりでなく、ひろ子はこころもちの上でたすかっているところがあるのであった。
雨はそのまま小ぶりになった。ひろ子も寝間着にかえて床の上に両脚をのばしていると、階下で水をこいで来る人の気配がし、階段の下まで来て、
「おごうはん、おごうはん。もうおよってでありますか」
女の声がした。
「沢田のおばさんで」
縫子が、上り口の襖をあけて顔を出した。
「おお縫子はん。水がさっきからおごりよりますで」
その声でむっくり、母とつや子がおき上った。
「どれ、ほんに、まあ、せんないこといのう」
つや子は、来合わせてくれた沢田の主人と息子にたのんで、一旦高いところへうつした衣裳箱を、今度は二階へあげて貰いはじめた。息も入れず、木の衣裳箱、次にトランク、それから行李、箪笥の引出しと、あげさせる。
その手をあけさせないさしずの間に素早く、
「えろうすみませんが、ちょいと置かしてつかアせ」
と沢田の家の深く大きい壺もかき上げられた。それには麦、米、粉が
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