消えない電燈の下で、落付かない夕飯を終った。
八時すぎになって、前の沢田へふるい[#「ふるい」に傍点]をかえして貰いに行ったつや子が、傘をたたみながら、あわただしく入って来た。
「おばあちゃん、川がおごりよりますて」
おこったように、登代が、
「どうしょうぞ!」
と云った。
「二十年も水がおごるようなことはありゃせんじゃったのに」
「おばあちゃん、去年から、大さわぎしよったじゃありませんか。すっかりものあげて、わたしが来てからもう二度も水がおごりよったのに……」
「どうするの? もし物をうごかすなら、今のうちの方がいいんじゃないのかしら、夜中に騒いだりするといけないから」
母は、半信半疑の面もちでしきりに雨音に耳を傾けた。
「――いくらか、ゆりたようじゃありますまいか」
「そうかしら」
ひろ子は、出水に遭った経験が全くなかった。二百十日の颱風で、雨戸をしめた小箱のような一人住みの家の二階がふっとびそうで眠れない思いをしたことはある。けれども、水について、ひろ子はほんとに何にも分らなかった。今の気持だけからいうと、この家にまで浸水しそうに感じられなかった。その感じにしかし、何の根
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