ままの紫っぽい色がただようて、枯木の梢の太陽が四方に放散する。紅の輝きの流れが見られる様である。
雪降りの日の様に見えるかぎりは真白で散り敷いた落葉の裏表からは絹針より細く鋭い霜の針がすき間もなく立って居る。その痛いように見える落葉をつまむと指のあたった処だけスーッととけて冷たくしみて行く。葉の面を被うて居る針は、見れば見るほど面白い結晶体で、山の様な、谷の様な、花や鳥又は一寸法師の様な形まで、せまっくるしい細かい処に表わして居る。樹木の影が地に落ちて、はでな縞目をつくり、処々に小石が宝石の様にかたい反射光線を出して居る。外の景色ものどかならば、人々の気持も静かである。元日だと云っても別に之ぞと云う東京ほどのにぎにぎしさもない。
来る人も少ないし、女家内でもあるのでおとそなんかも少しほかない。一盃おとそを飲めば後は熱酣でなければ飲んだ気のしない此処いらの連中のために酒が珍らしくまとまって台所にあるけれ共、それも、女ばかりの処であんまりお心よくして、酔いしれて、管《くだ》でも巻かれると始末が悪いと云って加減がしてある。
祖母と私は紋の附いた羽織を着、女中も、仕立下しの立ったり居たり
前へ
次へ
全109ページ中97ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング