れた土地でさえも肥料の入るわりに良い結果は表れない様な地質である、その上に耕すのも、ならすのも、収獲するにも、工業的《こうぎょうてき》の機械を用うる事はなく、鍬《くわ》、鋤《すき》、鎌《かま》などが彼等|唯一《ゆいつ》の用具であくまでもそれを保守して、新らしい機械などには見向きもしない有様で、それだから機械などはほとんど村に入り込んでは居ない様子である。
地質がよくないとは云え、機械農業が発達さえすれば、今までより少しは多く収獲が有るのは定《き》まった事だろうのに、農民は、発明される機械を試用する気にならず、又其を十分利用するだけ、序[#「序」に「(ママ)」の注記]的な頭脳は無いものの方が多いのでもあろう。
斯うして、荒れやすい土を耕し、意地《いじ》の悪い冬枯と戦うにも只、昔からの伝習だの、自分の小さい経験などを頼む事ほかしない。此処いらの純農民は、随分と貧しい生活をして居る。
養蚕《ようさん》は比較的一般に行われて、随って桑畑も多い。けれ共、大業にするのではなく、副業《ふくぎょう》にしているのだからその利益もしれたものである。
一年の間、春、夏、秋、と三度蚕を飼ってあがる利益
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