へ出て一二年奉公でもすれば、立派な奥様になりあがって、明日はどこの芝居、その次の日は何の会と歩き廻れるものの様に思って居る。都会の奥様は、日髪、日化粧で、長火鉢の前で鉄瓶の湯気の番人をして居ればすむ様に思って居る。
 東京――都会の生活を非常に理想的に考えて居る事、都会に出れば、道傍の石をつかむ様に成功の出来るもの、世話の仕手が四方八方にある様に思う事、食うに困る事等はない様に思う事等は、東京の生活をしたものがあんまり馬鹿馬鹿しいと思う位いに善い事ずくめに想《おも》って居るのである。東京を見た事もないで、どうしてそんなに善いとばかり想って居るかと云えば、東京見物に行ったものの土産話しと、雑誌の記事写真によるのである。
 農業休みに十日か二十日の東京見物に出かけたものは、只にぎやかな町の様子、はやしたてて居る見世物、目のさめる様な店飾りにイルミネーション、立派な装で自動車を飛ばせて行く人、ぴかぴかに光った頭の婦人、その他あれやこれや、只もうにぎやかなパッとしたむく鳥おどしに仕掛けてある事にまんまとおどされて、刺激の少ない処に居て急にさわがしい処に出たので、いいかげん頭が熱くなって、自動車
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