熱
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)滋亜燐《じあリン》
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時候あたりの気味で、此の二三日又少し熱が出た。
いつも、飲めと云われて居る滋亜燐《じあリン》を何と云う事はなしに忘れて、遠のいて居たからだと云われた。
私は、自分の体を少しも、粗末にあつかって居ないと思って自分では居るけれ共、はたのものの、皆が皆、私は体をむごくあつかって居ると云って居る。
何か仕事があると、それに熱中して、体の事を忘れては仕舞うのが癖である。
毎日毎日連続してある仕事をひかえてなど居る時は、随分夜更かしもしたり、やたらにお茶をのんだりする、事はある。
私は病弱して、病気に掛ろうものなら、それほどの病気でもなくて、すぐ、眼が落ちくぼんだり、青くしょぼしょぼになったりする、じき死んで仕舞いそうな気になるのである。
昨夜も、何となし、あつかったので、計って見ると七度七分あった。いつもより高くあがって居るのを見ると、何だか急に、大病にでもなった様な、又、大病の前徴ででも有
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