りはしまいかと云う心持になって、おずおずと母の処へ行く。
そうすると、私はきっと母に云われる。
第一夜更ししてのむべき薬をのまなかった事、只一寸の間、足袋なしで居た事を皆、この熱の原因として責められる。
[#ここから1字下げ]
「お前は、求めて病気をして居るんだから。
[#ここで字下げ終わり]
そう云われるのが何よりつらい。
熱の出たと云う事よりも苦《くる》しい事である。父は、あんまりの心配から、腹立たしい様に、
[#ここから1字下げ]
「それは、大病の元なんだからね。
青くひょろひょろになって肺病なんかんなったって、
私は見舞になんか行かれないんだ。
[#ここで字下げ終わり]
と云う。
私は、ポロポロ涙をこぼしてきいて居なければならない。
母がそう云うのも、父が云う事も、心配してくれるのだと云う事は分りきって居ながら、何だか、それほどには云わないでも、と云う気がする。
ほんとうに何でもない、只の風だ。
私はそう思って居ながら、父の云った事なんかを思い出すと、身も世もあられない様な思がする、のである。
キニーネをのんで、ひとりで、寝部屋に行って、厚い毛布の間に包ま
前へ
次へ
全6ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング