ば分らない事なのだから、実際の私の行末はまっくらな、辛い事ばかりかもしれないけれど、よく想像して居る方が一番いい。
 よく想像して力強く□□□□[#「□□□□」に「(四字不明)」の注記]歩いて行くと、その調子で、悪かった筈の事も、よく現れて来まいものでもない。又、大抵そうらしい。
 どんなに嬉しい、たのしい世の中でも千年と居るわけには行かない。
 とどのどんづまりには、死の神様がいらっしゃる。いやな事だ。
 けれ共、どうも仕様がない。
 私はきっと、顔中しわだらけになって、手が力がなくなって、いつでも眼に涙がたまって居る様になって、自分で自分の活きてる事が分らない様になると死ぬんだろう。
 その前でも、私が大病になって馬鹿にでもなる様だったら、却って、死んだ方が私の幸福だけれ共……。そう思いつづけて居ると、一寸の間に馬鹿になった私の様子が目の前にうかんで来る。
 まだ確かだった時に、丸をつけたり線を引いたりして、夢中になって読んだ本の中に座り込んで、あの、白痴特有のゲタゲタ笑いをしながら、書いたものを文庫から引きずり出しては、ベリベリ……ベリ……と、引き裂いて居る。
 母は、急に足りな
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