飛行機の下の村
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)胡坐《あぐら》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地付き]〔一九三一年十月〕
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 旧佐倉街道を横に切れると習志野に連る一帯の大雑木林だ。赤土の開墾道を多勢の男連が出てシャベルやスコップで道路工事をやっている。×村から野菜を○○へ運び出すのに、道はここ一つだ。それを軍馬が壊すので、村民がしなければならない。爺さんまで出て腰の煙草入を振り振りモッコの片棒担いでいる。
 附近に陸軍飛行機学校、機関銃隊、騎兵連隊、重砲隊などがある。開墾部落はその間に散在しているのだ。
 南京豆と胡麻畑の奥に、小さい藁葺屋根の家が見えた。われわれ一行三人が、前庭に入って行くと、
「よう!」
 低い窓からこっちを見て勢のいい声をかけたのは主人××君だ。土間で手拭をかぶって働いてたお神さんが、
「さ、おあがりな」
 春から懇意の△△君が作家同盟から今度文学新聞が発行されること、そこへ記事や写真を載せたくてやって来たことなどを話した。
   ×
 洗いざらしだが、さっぱりした半股引に袖なし
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