な子って云うのよ。
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 腹立たしい様な調子でぶつぶつ祖母は小さい妹の待遇法について不平を云った。
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「兄弟が多いからでしょう、仕方がありませんよねえ。今度病気がよくなったらこっちでお育てなさるといい。楽しみにもなるしするから。
「何! なおるもんで。
 お前が行きつく頃にはもう死んでるだろう。
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 重いと云って来た妹の病気について善い予期ばかりを持って居たい私の心に祖母の言葉はズシーンズシーンと響いた。
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「何にも死ぬときまった事《こ》っちゃあなし、
 今っからそんな事――
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 やたらにムシャクシャして私はスタスタと床に入って仕舞った。自分の頭をブッつける様に横になってもなかなか眠られ様とはしないで暗の中に落つかない瞳を泳がせて居た。一時の音をきいてから間もなく私は深い眠りに入ったけれ共短っかい間に沢山の夢を見た。
 その一つは私が大変赤い着物を着て松茸がりに山に行った、香り高い茸がゾクゾクと出て居るので段々|彼方《あっ》ちへ彼方へと行くと小川に松の木の橋がかかって居た、
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