、人間して居る。
 食べるものを遠慮なく欲しがる、その時に白い髪の黒い子が口を小さくしながら膝にすがって堪えられない魅力のある美くしいお菓子に折々流眼を呉れながらねだったならたとえいけないと叱るにもたまらない愛情がその心の奥にうごめいて居る。けれ共若しそれがきたならしい子だったら只もう不愉快な感ばかりになって仕舞う。
 子供につきものの愛嬌と云うものにとぼしい私の妹は笑うと云う事が比較的少なかった。子供にしては智的な意志の強い性質が顔に少しも子供らしい柔かみをあたえて居なかった。口元はそう云うたちの人に有り勝な大きくムンと結んで幾分かこわい様な二つの眼はよく張った額の下で輝いて居た。
 人に云われても一度自分の心で決した事はいやでも応でも仕とげる、そのために態度は随分粗野であった。
 声なんかも荒く出来て居た。
 けれ共色は白く髪は厚かった。粗野な一面には非常にデリケートな感情があって父親や兄達のこまこました事はやさしくしてやった。只一人の妹と云う事から両親の次に私はこの妹を大切にした、髪などをたまに結ってやったり歌を教えたりした。
 私の膝に抱かれたまま、私の髪の毛をいじる事が大変す
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